ティータイム


第62話 豊かさって何だろう

 周辺を見廻してみると目の前にはパソコン、携帯電話、側にはプリンター、スキャナー、FAXなどのOA機器やオーディオ製品、寝室にもテレビやDVDレコーダー、 階下に降りていけば、リビングにもテレビとパソコン、ピアノ、オーディオ機器などが並び台所へ行けば、冷蔵庫、オーブンレンジ、炊飯器、トースター、IHクッキングヒーターなどなど。
ほんの近くまで赴くにも車を利用しています。
 我ながら良くぞこんなに物を持っているものかと思います。このような家電製品や自動車を手に入れるために働いてきたかと思うと、少々侘しい思いすらしてしまいます。  確かに今まで使ってきたものが無くなってしまえば、大変不便に感じることでしょう。

 私が小さい頃に母親から「こまめに動きなさい、そうすると皆が気持良くすごせるようになるよ。」といつも言われていました。これは片付け事が苦手な私に向かっての教えです。 「こまめに動けば太っている暇がないからね。」とも言われました。しかしながら、現代文明社会はリモコンなる便利なものを世に送り出し、いよいよ人を動かさなくなりました。 お陰様で過剰カロリーを消費するためにジョギングさせられる羽目になってしまっております。それもこともあろうに自動車でジョギングコースがあるところまで通っているのです。 何だか本末転倒しているとしか言いようがありません。
 やはり、母の教えは偉大です。言いつけを守っていれば、このような事にはならなかったでしょうに。

 このような機械の類に囲まれ、過剰に摂取したエネルギーをこれまた時間を費やして燃焼させなければならないライフスタイルって本当に豊かといえるのでしょうか?
このような便利な道具を購入するために一体何時間働いているのでしょうか。携帯電話などの通信費のために何時間分の稼ぎを持っていかれているのでしょうか?
 携帯を槍玉に挙げたのは、かつて携帯電話の前身である自動車電話の開発にメーカーの一員として携わったことがあるからです。当時は現在のような使われ方は想像もしませんでした。 ただ移動体通信は世の中に革命的変化を与えるであろうことは予想しておりましたし、そのことが仕事のやりがいでもありました。
 しかしながら文明の利器は使い方次第という、あまりにも自明の結論をを与えてくれたに過ぎなかったと思います。

 現在、歳のせいもあるかと思いますが、ものに執着するといったことが無くなったように思います。また、食べ物についても新鮮な庭先野菜などが一番美味しく、 そして何よりの贅沢と思えるようになりました。近い将来、食物に関しては自給自足的な生活ができればと考え、少しずつ計画を立てています。

 その第一歩が、ニワトリ飼育の再開です。鳥インフルエンザが話題になる前には7羽ばかり飼育しておりましたが、何となく飼いにくい環境になってしまいました。
 餌は残飯を主として与えておりましたので、生ゴミは殆ど出ません。平飼いですから畑の雑草も食べてくれます。畑のミミズや虫などを啄んで美味しい卵を一日5,6個産んでくれてました。 当時は7人家族で毎日食べきれないくらいでありました。
 現在は、スーパーのパック入り卵ですが、あまり美味しく感じません。沢山卵を産むように高カロリーの配合飼料を与えているでしょうし、 もしかしたら排卵誘発剤でも与えてはいまいかと邪推してしまいます。それにケージ飼いで運動不足でしょう。 鶏もストレス溜まりますよね。まるで今の自分の姿と重なりあっているようです。

 次が、主食の米の生産です。現在も米を作っていますが、減農薬とはいえ農薬を散布しています。そして、収穫後は農協のカントリーに運んで一括保管してますので、 自分が作った米を食べることが出来ません。ですから自家消費分は手間隙掛かっても無農薬で栽培し、収穫後は天日乾燥にしたいと思っております。
無農薬にこだわるのは、玄米食だからです。真偽の程は定かではありませんが、米ぬかの部分に農薬が凝縮されることが指摘されております。ですから白米ならば大丈夫でしょうが、 玄米には影響があるかも知れないのです。(この歳になって、セーブしたってたかが知れたことと言われてしまえばそれまでのことですが・・・。 それは元気に死を迎えるために必要なことだと思っています。)
 自家消費分は多くて200キロ程度でしょうから10アール位の作付けで、コンバインや田植え機などの農業機械が無くても昔ながらの農機具で何とかできると思っております。 これでも小学生のころから、田植えや稲刈りなどの手伝をさせられておりましたので、昔とった杵柄とまではいかないまでも何とかなるでしょう。
 さて脱穀と籾摺りはどうしよう。今時、千歯なんて博物館へ行かなければお目にかかれないでしょうし、昔みたいに籾摺り屋さんなんて居ないでしょうからね。
大昔に帰って、棒で叩くという手もありますね。その時になったら何とかなるでしょう。また開発する楽しみが一つ増えました。

 庭先野菜は、今まで通りで十分かと思っています。ニワトリ飼育を再開すれば鶏糞がとれるようになりますので、有機肥料として活用し、 生ゴミも肥料化して循環型の生活スタイルとすることも可能になります。
 そして裏山ではブルーベリーやキウイなどの果樹により食生活に潤いを与えます。これで、食に関しては少量の魚肉を購入すればこと足ります。
 後は水道光熱費や若干の費えを補うくらいの収入を確保すれば、先ずは老後の生活はこれで良しとすべきかと考えております。

 農作業をすれば、消費カロリーも増えますからジョギングなんかする必要もなくなります。心肺機能を維持するためには、毎日裏山に歩いて畑仕事に出ればこと足ります。 晴耕雨読に明け暮れ、ある日突然農作業中にぽっくりと天寿を全うすることができれば、この上なく幸福せであるような気がします。

 さて、何年後にこのような夢のような生活をおくれるようになるのでしょうか。 後十年もすれば誰も耕作しないような田んぼや畑ばかりになってしまいます。いやそれまで持つかな?
その頃は、耕作に適さない荒れ果てた荒野になってしまっているかも知れません。

 その前に、次のような批判があがりそうです。
自分の都合だけで、良いとこ取をしているだけではないかと。
 確かに兼業農家は悪者呼ばわりされております。大規模農業化を阻害する最大の要因とも言われています。事実、指摘されているような兼業農家もあることでしょう。
しかし山間部の農地には誰も目を向けてはくれません。そもそも傾斜地や棚田で大規模集約化した農業をどうやってやれというのですか?
 このような状況は、もはや産業とは言い難いものがあります。それでも守っていかなければなりません。その崩壊は目前に迫っているのです。
 自分の手の届く範囲では採算は度外視してでも、ただただ自分の楽しみのために農地を維持していこうと思っています。

 そうそう、このような生活をしたいご奇特な方は田舎へ引っ越してきてください。大歓迎しますよ。

<参 考>
第57話 この不景気に思うこと
第63話 自己流ちょっぴりおこげの玄米炊飯法
第88話 農業ことはじめ
第102話 農業ことはじめ(9)−兼業農家について

2009/04/15新規

2013/12/23更新


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