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第52話 許可・認可・特許

 行政書士とは名ばかりで、法律のことは全く知らないのではないかという声が聞こえてきそうですので、たまには行政書士ネタでも書いてみることにします。

 行政書士法(本ページ末の抜粋をご参照ください)の規定で、その業務として「官公署に提出する書類を作成すること」というのがあります。
 官公署とはいわゆるお役所(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町村役場、警察署など)のことです。
これらの官公署に提出する書類は一万種類を超えるといわれております。 身近なものをあげれば、婚姻届、出生届、転入・転出届などがあるでしょう。日常生活で必要な書類のほとんどは本人が簡単に作成できるものばかりです。
 しかし、何か事業を始めようとしたりすると業種によっては営業許可などが必要であったりします。このような書類は、一般的に許認可書類と言われており、 作成することが煩雑であり、それなりのノウハウが必要なこともあります。このような書類を作成する専門家として行政書士が存在しているのです。

 さて、ここで今日のテーマである「許可」、「認可」、「特許」について少しばかり解説してみたいと思います。

許可
 許可とは、行政法令または行政行為にによる一般的な禁止(不作為義務)を特定の場合に解除し、適法に一定の行為をすることができるようにする行政行為をいいます。

 許可に属するものとして、旅館、風俗営業、薬局、質屋、古物商などの営業許可や医師免許、自動車運転免許などがあります。

 許可は、禁止されたことに対する自由の回復というべきものですから、新たな権利などが発生するものではありませんし、 許可されたからといって何をやっても良いというものではありません。 当然のこととして、他の行政法令や行政行為による禁止や私法上の不法行為をも解除されたことにもなりません。
 また、許可を受けずに行った行為についても強制執行や処罰の対象となることはあっても、許可を受けていないことを理由として直ちにその行為の効力が否定されるわけではありません。
例えば、風俗営業許可を得ていないのにも関わらすサービスを提供していた場合に、客はその料金の支払を免れるかといったことを考えてみれば判り易いと思います。

 許可制度は、本来営業の自由といった観点からすれば、これを制限することになります。従って、これらの制限は社会に害をなすなどの合理的理由が必要であり、 必要最小限にとどめられるべきものと考えますが、名目だけで実効性のない規制や既得権益を擁護するための規制が見受けられるのも事実です。
 昨今、規制緩和が進展しつつありますが、規制緩和の行き過ぎも指摘されております。現代の急速な社会変化に制度も柔軟に対応していくことが求められているのではないでしょうか。

認可
 認可とは、行政庁が第三者の行為を補完して、その法律上の効力を完成させる行政行為をいいます。

 認可に属するものとして、私立学校設立、土地改良区設立、特許企業の料金などがあります。

 認可により、第三者の行う法行為の効力の完全な発効となります。ですから認可を要する行為に認可がなされていない場合には、原則として無効となります。
この点、許可を要する行為を許可無く行った場合でも当然として無効とならないこととは異にします。
 また、認可は第三者の法行為の効力を完成させるための行政行為ですから、その元となる行為が不成立や無効のときには、認可によって元の行為が有効になることはありません。

 更に、認可は法効果に関することですので、認可を要する行為を認可を受けずに行っても原則的に禁止違反に対する強制執行や処罰されることはありません。 但し、許可と認可の両側面を持ったものもあります。(農地法など)

特許
 特許とは、直接の相手方のために、権利能力・行為能力・特定の権利または包括的な法律関係を設定する行政行為をいいます。

 特許に属するものとして、鉱業許可、道路・河川占用許可、公企業の特許などがあります。

 特許は、出願をその前提としており、その趣旨と異なる特許は有効に成立しません。


 以上、「許可」、「認可」、「特許」についての法的性格を述べましたが、実際の法令では、許可、認可、免許、特許といった用語が混用されております。 そして、許可と認可の二面的性格を持ったものもありますので、法令の規定している趣旨によって、個別に検討する必要があります。

 行政行為には覊束(きそく)行為と裁量行為といった分類があります。
覊束行為とは法が行政庁を全面的に拘束し、行政行為は法の具体化や執行にとどまるような行政行為をいいます。
また、裁量行為とは、法が行政庁にある範囲での自由裁量を認めた行政行為をいいます。
 許認可などにどの程度の自由裁量の余地が認められるかは、法令に明文の規定が無い限り、はなはだ曖昧にならざるを得ません。
自由裁量の余地を厳格にすれば、杓子定規になってしまいますし、かといって大幅に認めれば役人の恣意によって法の趣旨が歪められかねません。
 しかし、現代社会は急激に変化しており、これに対して法の整備が追いつくことができず、様々な矛盾を抱えております。
このような状況を打開するためには、行政庁の柔軟な対応を可能にする余地を組み込んでおく必要があります。 しかし、同時に自由裁量の暴走を食い止める仕組みも同時に組み込む必要があることも念頭においておかなければならないことだと考えます。

<出典・参考文献>
和田秀夫著「行政法講義 上」学陽書房
田中二郎著「要説 行政法 新版」弘文堂
今村成和著「行政法入門 新版」有斐閣双書
田上譲治著「行政法要説」有斐閣双書
杉村敏正編「行政法概説(総論)(各論)改訂版」有斐閣双書


行政書士法−抜粋−

(業 務)
第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認 識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録 を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

 

2009/02/08新規


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