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第45話 電子ブレーカーについて

 電子ブレーカーに関するお問合せが数件続いてありましたので、とりあえずこのコーナーで説明しておきます。
「電子ブレーカー」という呼称は、どこかの会社から商標登録されているかも知れません。従いまして、ここでは特定の商品名ではなく、 世間で一般的に呼び習わされている「いわゆる電子ブレーカー」というものについて述べることとします。 当然のこととして、特定の商品の権利を侵害する意図など無いことを予めお断りしておきます。

 「電子ブレーカー」とは、低圧電力(動力)の負荷設備契約を主開閉器契約へ変更することによって契約電力を引き下げることで基本料金の削減(コストダウン)を目的とするものです。
負荷設備契約では、電力使用申込書に記載した負荷設備を電力供給約款による計算法によって契約電力が決定されます。 従って、同時稼動しない負荷がある場合にでも当該負荷が合算されてしまうので、この場合需要家側に不利になります。
 負荷設備契約の場合、一旦契約すると電力使用量の増減とは無関係に基本料金の計算が契約電力によってなされますので、 契約電力に対する負荷率が著しく低くなってしまうことが多いのです。

 一方、主開閉器契約は、電力会社より認定された開閉器(ブレーカー)によって契約電力を決定するものです。 家庭用の従量電灯の契約と同じと考えればお分かりいただけると思います。
 即ち、電力を使い過ぎた場合にはプレーカーが落ちて停電するといったことになります。 同時稼動する負荷が無いのであれば、負荷設備契約より小さい契約電力で済みますので、その分基本料金を安くすることができます。
 

 ここまでは一般論です。電力会社の認定を受けたブレーカーであれば何も「電子ブレーカー」なるものを導入しなくても済む話です。

 では一般のブレーカーと「電子ブレーカー」との違いは何かということを説明したいと思います。

 ブレーカーの機能として定格電流以下では落ちないことと定格電流を超えた場合に超えた度合いに応じた時間以内に落ちることが要求されます。
定格電流を超えた度合いと、落ちるまでの時間との関係が規格で定められています。
 定格電流をほんの少しでも超えたからといって、即座に落ちるようだと実用上困りますので、 定格の何%超えたら何秒以内にといった形になっており、その超える度合いが大きい程、短時間で落ちるようになっております。

 この機能を実現するために一般のブレーカーの多くは、バイメタルなどを利用したサーマル方式を採用しております。 金属に電流が流れるとジュール熱が発生し金属の温度が上昇します。金属の温度が上昇すると熱膨張によって金属が膨張します。 この膨張率は金属の種類によって異なりますので、二種類の金属を張り合わせると金属の伸びが異なることからソリが発生します。 このソリを温度スイッチとして利用します。昔(今でも?)コタツなどの温度調節器に使われているものです。
 バイメタルは、安価で確実な温度スイッチとして様々な分野で利用されております。

 バイメタルなどのサーマル方式は、動作原理から判るように電流を熱で捉えようとしますので、 大電流により一旦温まってしまうと冷めるまでは熱が残ってしまいます。冷め切った状態からではブレーカーが落ちなかったのに、温度が残った状態からでは 同じ電流を流したときでも落ちてしまうことがあります。
 また、サーマル方式は周囲の温度などの外的要因により誤差が大きいことから、規格より短い時間で確実に落ちる(安全サイド)ように設計されています。

 このようなサーマル方式の欠点を改良したのが、「電子ブレーカー」というものです。

 製造メーカーによって動作原理は異なるかも知れませんが、基本的には瞬時電流を計測して、その電流に応じた規定の遮断時間ギリギリまでブレーカーを落とさないようにしております。
 電流が一旦許容値以下に下がったら遮断タイマーをリセットして、規格で許された最大の時間ブレーカーを落とさず使用できるようにしております。
 つまり、一般のブレーカーより一定時間以内ならばより多くの電流を流せることになります。負荷変動が激しい機器(短時間でON/OFFする機器など)の場合には、 例え定格電流を超えて使用しても、必ず短時間の内に定格電流以下に戻りますのでブレーカーが落ちなくて済みます。

 一般のブレーカーですと温度が残ったままで継続使用しているとブレーカーが落ちてしまう可能性がありますが、電子ブレーカーでは落ちることはありません。

 ここに一般ブレーカーよりは「電子ブレーカー」がより小さい契約電力にできる理由があるのです。

 但し、主開閉器から各負荷までの配電線がブレーカで許容される最大電流(それも定常的に)を流すに十分なものが使用されていることが前提であることは言うまでもないことです。 このことが守られていないと火災などの重大事故に繋がる可能性がありますので、くれぐれもご注意ください。

 「電子ブレーカー」といえどもブレーカーですから、主開閉器として使用し電力会社と主開閉器契約を結ぶためには、 「電子ブレーカー」の認定を電力会社から受ける必要があります。
そういった意味で「電子ブレーカー」というものは不当・不法なものではないと言えます。

 しかし「電子ブレーカー」で省エネができるかというと異論があります。

 過大契約を適正な契約電力にすることによって、その契約電力の差分に当る基本料金を削減することに目的があるのです。
あくまでもコストダウンの一手段であるに過ぎません。ですからエネルギー使用量を削減することはできません。

 さて問題は売り方にあると思われます。

第39話 省エネ商法について」、その他のテーマでも書いておりますように、 基本料金の削減額の計算方法やシステム価格が如何にして決められているかが問題なのです。
 そして法外な価格で販売したり、メリットを多く出すために過小な契約電力を提案したりして、後々トラブルを起こすような詐欺まがいの悪徳業者がいるのも事実です。

 こと「省エネ商法」に限らず、この世の商法にすべからく通ずるところかも知れませんが、最終的には自己責任ですから各自で熟慮して判断していただく外ないと思います。

<2012/05/30 追記>
 現在「電子ブレーカー」の導入をご検討でしたら「第123話 電子ブレーカー(節電ブレーカー)を導入する前に」 をご一読下さいますようお願いします。


<2013/04/19 追記>
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<参 考>
 第4話 省エネ提案書の不思議
 第5話 コストダウンと省エネルギー
 第9話 悪徳省エネ業者
 第20話 節電器について

2009/01/06新規

2013/04/19更新


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