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第105話 操縦訓練記(26)−ナビゲーション(2)

 天候に恵まれず、なかなか三角コースのナビソロに出ることができません。先日の訓練も天候が良ければナビソロの予定でした。移動性高気圧が張り出して きているものの天候の回復が遅れ、結局はペンディングとなってしまいました。
 ということで急遽天草空港(RJDA)か壱岐空港(RJDB)へのナビゲーション訓練ということになりました。天草は一回行ったことがありますので、壱岐空港を希望しました。 早速ナビゲーションログ(ナビログ)の作成にとりかかったのですが、久々に作成するものですから色々なことを忘れてしまっており、一々調べながら作ったものですから、 往復分で2時間も掛かってしまいました。実地試験の場合1時間以内に作成しなければなりませんので前途が危ぶまれます。
 コースは佐賀空港(RJFS)〜RCA〜鹿島〜EOC〜加唐島〜壱岐空港(RJDB)、壱岐空港(RJDB)〜RCA〜加唐島〜平戸〜EOC〜鹿島〜佐賀空港(RJFS)で、上層風を入れた偏流修正角 (WCA)を計算してナビログを作成しました。
しかし、年はとりたくないものです。記憶力が急速に衰えたようです。フライトコンピュータ(航空計算盤)の使い方を忘れかけたり、気温減率を忘れてしまったりと散々です。 かくなる上は練習あるのみです。各空港へ行くことを想定して、数多くログを作成する練習をしなければ、とてもとても実地試験は受けられそうにありません。
おっとその前にオーラル(口頭試問)対策も・・・。

 何とかナビログを作成し終え、航空局(CAB)に往復のフライトプランを提出し、外部点検を済ませと何時ものテイクオフまでのルーチンワークです。
テイクオフしたのがとっくに昼を回っておりました。RWY-29からショートフィールドテイクオフ、レフトターンし30°カットで鹿島へのルートに乗せます。 高度3,000フィートでレベルオフし、ナビの発動点である鹿島へ向かいます。鹿島からヘディングを加唐島へ向けようとターンしている最中に何となく違和感を感じました。 ナビログに記載したコンパスヘディング(CH)に合わせるとどうも方向が違う!!
 正面には八幡岳(2,507フィート)、右前方には天山(3,432フィート)が見えるはずなのに、見当外れの方向に飛んでいっている。一瞬パニックに陥りました。教官同乗で本当に良かった。
原因は単なる計算間違いでした。WCAを加算する時に桁上がりをせずに100°少なくCHを記入していたのでありました。とりあえず、マグネテイックヘディング(MH)に合わせる と思い描いた風景と一致し、やっと気持を落着かせることができました。

 しばらくヘディングをキープすると特徴的なアンテナ群がある八幡岳をかすめるように通過し、ほぼオンコースであることが判り一先ず安堵しました。そうこうしている内に前方に雲の塊が見えて きました。どうもこのままだと雲に突っ込みそうです。八幡岳をクリアしているので、コース上には障害はありません。高度を2,500フィートまで下げて雲をクリアしました。
 初めてのコースなので、地形の判読がなかなかできません。前方の島の内どれが加唐島なのか判りません。壱岐のVOR/DMEにより加唐島と判定し、壱岐リモートをコール しましたが、なかなか返答がありません。周波数をチェックするなどしてコールしてもまた返答なし。少々焦ってきたところで、やっとコンタクトができました。
 初めてのリモート空港なので、馴れないATCに戸惑いながらも何とかこなし、RWY-02へアプローチしました。風は5〜6kt(Max10kt)のクロスウインドです。 佐賀空港と比べると滑走路の長さも幅も違います。日頃馴れた滑走路より小さく見えますので、通常は低めにアプローチしてしまうのですが、私の癖で高めのアプローチに なってしまいました。タッチダウンでバウンドしてしまったものの何とか降ろすことができました。

 壱岐空港には15分位の滞在でした。何時の日にか海の幸を満喫するためにと思い、空港においてあった民宿などのパンフレットを頂戴して参りました。
帰りは少々遠回りして平戸経由のコースです。RWY-02からテイクオフし、加唐島へ向かいます。加唐島にて変針し、平戸大橋に向かいます。今度はナビログ通りで 問題無いようで一安心です。WCAも適切に取れているようで、ほぼオンコースを維持しております。加唐島から数分の飛行で、遥か前方に平戸大橋が見えてきました。 左手には海岸線や特長のある島々が見えております。松浦の火力発電所などが著名な地上物標として確認しつつフライトを続けます。
 ほほオンタイムで平戸大橋を通過し、鹿島に向けて変針です。途中に国見山(2,549フィート)がありますので、高度を3,500フィートまで上げる予定でしたが、 上の方には雲が存在するようです。高度を上げるか60°カットで山を避けるか迷っている時、前方の雲がポッカリ空いているのが見えました。そこで当初の予定通り上昇する 判断をしました。
 途中、福岡インフォメーションに位置通報(ポジションレポート)に手間取っている間、高度が200フィート、ヘディングが20°程ずれてしまっておりました。 少々言い訳ですが「気流が乱れていたのです。」といいたいのですが、そんなの言い訳にもなりません。恐らく実地試験ではアウトでしょう。
 国見山を越えたら鹿島は直ぐそこです。高速の武雄ジャンクションや嬉野ICで位置確認を行い、鹿島の位置通報点を目指します。
 鹿島の手前で降下を開始します。鹿島通過にてナビの終了を宣言し、着陸準備へ移ります。風が330/02でしたので、鹿島からですからRWY-11が来るかなと思いきや、 RWY-29が指定されました。航空大学がTGLの訓練をしているようです。「ラッキー!」ダウンウインドに入れます。RWY-11の場合は、苦手のダイレクトベースになります。 何時も高めのアプローチになってしまい高度処理に追われことになってしまいます。今回は、余裕をもって望めそうです。少々、センターを外してしまいましたが、 無難に降ろすことができました。
 最後の最後でセンターを外すのは、引き起こしのタイミングでラダー操作が疎かになってしまうのか、無意識のうちに左手に力が入りエルロンを切ってしまっている かの何れか、あるいはその両方が原因なのでしょう。前々からの癖なのですが、なかなか治すことができません。
 タッチダウン直前には、エアスピードが減少しますから地上風の影響が強まりますし、スロットル操作や引き起こし操作などが凝縮します。 ですからジャイロ効果、P-ファクター、プロペラ後流などがまとめて効いてきます。これらの影響をラダー操作で取り除かなければなりません。 頭で考えてもできるものではありません。自然にラダーが当てられるようにならないければならないのだと思います。
 ということで、壱岐空港への初フライトの実況でした。

 現在までフライト回数86回、着陸回数371回、総飛行時間75時間05分となりました。
(内、ソロの飛行時間4時間15分、着陸回数22回)

2011/01/17新規

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