☆空調機制御方式−その2(間欠運転)☆

 その1で直接制御方式は、デマンドピークカットには効果的ですが、使用電力量を削減するためには、あまり効果が無いことを説明しました。
そこで、考えだされたのが”間欠運転方式”です。その2では、間欠運転方式の動作を説明したいと思います。

<間欠運転方式>
 間欠運転方式とは、圧縮機を定期的(間欠)に強制停止させる運転方式です。直接制御方式はデマンドコントローラの遮断信号の 時だけ強制停止させるのに対して、間欠運転方式の場合は定期的に強制停止させる点にあります。
強制停止をかけるタイミングは様々で、各メーカさんのノウハウがあるようです。

 ここで少し本論から外れて、思考実験をしてみましょう。
いつものように冷房設定温度を25℃に設定して運転しているエアコンがあるとしましょう。つまり、この部屋の室温は25±1℃に 維持されていることになります。
この空調機(エアコン)の圧縮機に対して強制停止をかけることにします。強制停止は10分間のうち5分間停止させることとします。 つまり、10分間のうち5分間は動いても良いが、5分間は動きたくても動けなくします。
そうするとどんなことが起こるか、考えてみましょう。

@圧縮機が運転していない時(送風運転中で自然に室温が上昇している時)
 元々、圧縮機が運転していない時に強制停止しても何も起こりません。強制停止期間の5分の間に室温が26℃を超えた場合には、 本来ならばこの時点で圧縮機が運転を開始するはずですが、強制停止になっていますから動けません。その結果室温が上昇し続けます。 強制停止の5分間が経過したとたん圧縮機が運転を開始し、室温が下がりはじめます。
A圧縮機が運転中(室温を下げている時)
 設定温度を維持するため圧縮機が運転しているわけですから、室温は少なくとも24℃以上のはずです。この時、強制停止が かかりますから室温は上昇を始めます。5分間の強制停止が終了した時、室温は強制停止がかかった温度以上になっていますから、 圧縮機の運転が開始します。
B5分間の運転可能な期間だけでは室温が下がり切れない場合
 強制停止期間中に温度が上昇します。次の圧縮機の動作可能期間の5分間目一杯使っても室温を24℃まで下げきれない場合には、 圧縮機が動作中している最中に再び強制停止となってしまいます。 そうしますと室温は更に上昇し、次の動作可能期間でもまた室温を下げ切れないうちに強制停止となってしまいます。
その結果、室温は一定の温度まで上昇します。何度まで上昇するかは、その時の条件によって左右されますから、一概には言えません。

 ここまでは、何となくイメージしていただけたかと思います。 動作的には複雑ですね。何せ制御の元になるものが二つ(温度設定器と強制停止)あって、その組み合せですから・・・。
本来の空調機の動作は温度設定器の設定温度で圧縮機が間欠的に動作して室温を一定範囲に維持するという ものでした。
その温度設定器の動作とは、無関係に強制停止をかけるのが間欠運転方式の特長です。この欠点をカバーするために圧縮機停止中の 強制停止はかけないようにするとか色々な手法が出てきていますが、本質的には同じことだと思います。
一にも二にも室温とは無関係に圧縮機を制御しようとしているのです。空調機本来の役割は、室温を一定に維持することにある ということをもう一度思い出してください。

では何故そこまで(空調機本来の役割を犠牲に)して、間欠運転こだわらなければならないのでしょうか?
私には理解できません。温度管理を適切に実行するだけでよいのです。冷し過ぎや暖めすぎを防止すれば確実に省エネになります。

<間欠運転でどれくらい省エネできるのか?>
 先程の例では、10分間のうち5分間圧縮機を強制停止させるわけですから、50%の省エネになると思われがちです。 実際のところはどうなんでしょうか?
またまた思考実験をしてみましょう。
先の思考実験の@の強制停止期間が終わり、運転可能期間内(次に強制停止するまでの5分以内で)に室温が下がりきった (24℃に達した)場合には、温度調節器の指令で圧縮機は停止します。
室温はこの時どうなるかというと、強制停止でいったん室温は上昇しますが、強制停止がなくなると元の室温に戻ります。 これは、「空調機制御方式−その1(直接制御)」で説明しましたように、使用電力量の削減にはならないというのが結論でした。

それでは、先の思考実験のAの場合にはどうでしょうか。強制停止期間は室温が上昇します。 @の場合と同様に運転可能期間内(次に強制停止するまでの5分以内で)に室温が下がりきった場合には、殆ど効果がありません。
逆に、運転可能期間内で室温が下がりきれなかった場合には、圧縮機の動作中に強制停止が入りますので、その結果室温が上昇します。 この時は、何がしかの使用電力量の削減になりますが、その代わり室温は上昇します。

最後に先の思考実験のBの場合ですが、これは動作可能期間では室温を下げきれずに再度強制停止するのですから、 室温の取戻しがない分だけ使用電力量の削減になります。その結果、当然の如く、室温は上昇します。



 ここまで、大変長くある意味では繰り返し似たようなことをくどくど述べてきました。
結論は、間欠運転をしていったん上昇した室温が元に戻るようだと使用電力量の削減(省エネ)はできないとういことです。
使用電力量の削減効果があるのは、Aの後半部分とBの室温が下がりきらないうちに強制停止が入る場合です。
重要なことは、その結果室温が上昇することです。
「空調温度管理と省エネの仕組み」でも説明しましたように、冷房設定温度を高くすれば使用電力量の削減(省エネ)ができます。 間欠運転方式は、この室温を上昇させるための一手段として導入されたものです。しかし、思考実験でも考えましたように室温が 下がってしまうケース(動作可能期間中に室温が下がりきる場合)があります。 これを防止しない限り、期待した電力量の削減効果は期待できないと考えられます。
更に問題なのは、「空調機制御方式−その1(直接制御)」でも説明しましたように温度設定に人の行動が絡むことです。 暑くなれば冷房温度を下げてしまうというのは、ある意味では仕方の無いことかと思います。
しかし、それでも省エネを実現するためには何らかの基準を設けて、それを着実に履行することが必要です。

これらの諸問題を解決し省エネを実現するということが空調温度管理方式の出発点なのです。

 「空調機制御方式−その3(間欠運転の補足説明)」で、もう少し細かいところを説明します。

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